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仙台高等裁判所秋田支部 昭和32年(ウ)58号 決定

申立人 林茂

主文

本件訴訟上の救助申立を却下する。

理由

申立人の救助申請理由は別紙のとおりである。

民訴法第一一九条によれば訴訟上の救助は各審においてこれを与うと規定されており、各審級毎に本案の係属する裁判所において付与すべきか否を決定すべきことになつている。しかるところ申立人は当審昭和三一年(ネ)第一三四号家屋明渡請求控訴事件において敗訴し該判決に対し上告状を当裁判所に提出し上告をなしたのであるが、その上告状には印紙を貼用せず、該印紙その他今後生ずべき訴訟費用の救助を求める旨の申請をも同時になしているので、これが許否につき審判をなすべきであるが既に当裁判所としては本案につき終局判決をなしているので果して右申請につき当庁において判断をなすべきものなりや否やにつき検討の要がある。よつて按ずるに原裁判所たる当審はさきに控訴審としてなした本案判決に対して上告の提起があつた場合民訴法第三九九条の規定により、その上告の適否を審査しうべきであり、その場合即ち該審査の段階においては事件はなお当裁判所に係属すると認むべきであつてこれは一種の上告審としての手続関係ではあるが原裁判所に係属すると云う特種の関係にあるものというベきである。従て当審としては前記民訴法第一一九条によりいわゆる本案の係属する裁判所に該当するものとして訴訟救助を付与すべきか否につき判断をなすべき権限を有するものと解するのを相当とする。よつて次に救助を付与すべきか否の点について按ずるに訴訟上の救助が付与されるためには申請人において訴訟費用を支払う資力なく、本案の訴につき勝訴の見込あることを必要とする。然るところ申請人においては既に本案につき第一、二審とも敗訴している許りでなく、その証拠関係及び判決理由その他記録全般を仔細に検討するに上告審において勝訴の結果を得るが如きことは到底これを期待しうべくもないものと認める外はない。されば本件申立は申請人が果して無資力か否かにつき審究するまでもなく失当として却下すべきものとして主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 松村美佐男 裁判官 松本晃平 裁判官 小友末知)

救助申請の事由

一、申請人は雑穀商を営んでゐた者で、政府の金融引締政策の実施に依り営業継続困難となり、本件上告事件不動産を始めとする上告人所有不動産の利用と処分により資産整理の実行をして債権者に対する債務弁済の義務を履行し、再起を企図してゐた者でありますが、被上告人との紛争の為業務継続不能の状況に追込まれ、現状では食生活をすら維持するに困難な状況に在り、裁判費用だけでもせめて都合せんと努力しては居りますが調達出来かねて居りますので右資力を有するに至る迄

二、本件上告事件に関しては充分勝訴の見込みが御座居ますので裁判費用支払の御猶予を賜り度請願に及びました。

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